認知行動療法の基礎知識 ①(成り立ちと発想)

これから、皆さまに少しでも認知行動療法に触れていただきたいと思い、今後少しずつ基礎知識を掲載していきたいと思います。

第1回目は認知行動療法の簡単な成り立ちと、その発想についてです。

認知行動療法の成り立ちとしては、まず1953年に行動療法という概念が生まれ(スキナーら)、1960年代には認知療法(ベック)や論理療法(エリス)といった精神療法における認知的アプローチが誕生し、1970年代に入って、それらはきわめて自然な形で融合することとなって認知行動療法の始まりとなりました。

1970年代後半からは、考え方や信念といった個人の考え方(認知)が問題や症状の発生と維持にとって、また治療上大きな意義をもっていることを考慮し、認知の修正を治療のきっかけ、あるいは目標として、また、より大きな治療効果を狙って認知の修正を積極的に進めようとする認知行動療法が発展してきました。

今では、認知行動療法とは一般的に、「個人の行動と認知の問題に焦点を当て、そこに含まれる行動上の問題、認知の問題、身体の問題、そして動機づけの問題を合理的に解決するために計画された構造化された治療法であり、自己理解に基づく問題解決と、セルフ・コントロールに向けた教授学習のプロセス」であると定義されています。(1)

このように書いてしまうと、難しそうで尻込みされてしまう方も多いと思いますが、分かりやすく、少しずつお話していきますので安心してくださいね。

 

そして、認知行動療法の発想を喩える次のような話があります。

『ある若者が釣りの帰り道、一匹の大きな魚をぶら下げていた。畑の中を歩く途中、一人の老人が若者に声をかけた。「旅の途中なのだが、もう三日も何も口にしていない。飢えて死にそうだ」と。若者は久しぶりのご馳走だと思っていたが、このまま老人を見捨ててよいものかと悩んだ。』

さて、この時、若者は老人に対してどのような援助ができるでしょうか。

まず、老人に魚をあげることは、なるほど老人を助けることができます。それが全部であっても、半分であっても老人は飢えをしのぐことができます。

しかし、もしその老人が何日も食べることができなければ、老人はまた危機にさらされることになります。

若者は老人にこう言いました。

「おじいさん、この釣竿をあげましょう。畑のこのようになっているところをほじくるとミミズが見つかるから、それを捕まえて、川の深くなっているところで針にミミズをつけて糸を垂らすと魚が釣れますよ。お腹がすいたら魚を釣れば、これからも困らなくてすみますよ」と。

私だったら、まず魚をあげて(今の飢えをしのいで)から、釣りの方法を教えると思いますが(笑)、具体的な方法を教授しているあたりは、若者がいなくても老人が一人で魚を得られるようにスキルをつけるという、とても認知行動療法らしいお話だと思います。

 

クライエント様はいずれ治療者(セラピスト・カウンセラー)の元を離れていきます。

その時に将来起こりうる問題に対して自ら対処できる力(セルフ・コントロール)を身につけていれば、問題は解決に近づいたと言えます。

そのためには、直面する問題の解決だけでなく、将来問題が生じた時にも解決法として使うことのできるアイデア、あるいは問題の再発を予防するための問題解決のアイデアを考えることはとても大切なことなのです。

今抱えている問題をどうすればなくすことができるかだけでなく、自立して問題解決できる「武器(スキル)」をクライエント様が生活の中で身につけるために、一緒に取り組む心理療法が「認知行動療法」だと言えるでしょう。

 

(1)坂野雄二『認知行動療法』(日本評論社、1995)